業界の大会で日経連常任理事の祝辞                 諸 井 貫 一 

本日は、当業界にご活躍の皆さんの年次大会に参列する光栄を有しましたことを、厚くお礼申し上げます。先日、ある会合へ出席いたしましたところ、明治百年の話がでまして、百年たってこれだけのことをしたというような成果をひとつ言ってみようじやないかということになったのであります。突差のことで、思いつきだったのですが、私は産業人として、二つの点を申したのであります。

 それはまず第一に、この百年の間に、近代科学というものをわがものにして、これを立派に駆使していろいろ成果をあげている。年々、工夫、改良して、進歩に遅れないような新製品を出してやっている、これが一つの点であります。

 もう一つは、このいろいろの物を作り、工業を営むあるいは商業を営む、そういうような経済を運営していく上に、自由企業を打ち立てた。今日でも国の予算でやっている仕事がないわけではありません。しかしほとんど大半の経済の運営は、われわれが集まって企業というものを作り、企業の一切の責任において、事業の経営をしている。

 最近世界には、たくさんの新興国家が起こりつつあります。これらの国々がこれだけのことをこれからの百年の間にやり得るだろうか、中々これは困難な事業である。日本はまだ技術もそう進歩しない時だったから幸せだったといえます。

 私は、この百年間に日本は基礎作りだけはできたように思うが、しかし、これからが大切であって、これをますます発展させる努力をすべきであるということを述べたわけであります。

 この感想を申しあげて、ご祝辞にかえる次第であります。

 

注意 業界の大会に、来賓として招待を受けた場合は、固苦しいあいさつよりも、人がらをしのばせる話のほうが、案外喜ばれるものです。

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