晩婚の友人への祝辞

 本日はまことにおめでとうございます。このめでたい日を、長い間待望していた友人の一人として、心からおよろこび申しあげます。

 私と大日向君は、学校を同じくする同窓の者で、社会へ出ましても仕事の方向はまるっきり違いましたが、どちらからともなく音信が断続的ながらつづいていまして、何て申しますか、ウマが合うと申しますか、今日に至るまで交際はつづいております。

 その交際の続いている大きな原因は、彼が常に私の師匠であるからであります。

 最初に音楽の楽しさを教えてくれたのも彼ですし、次はカメラヘの入門、それからゴルフの手ほどき、と全く私という男は、彼に手を取られねば、何もできないような、だらしのないものであります。

 ところが一つだけ私が大日向君より師匠になれることがございます。それは結婚生活で、私は彼より十年の先輩で、おまけに二人の子の親という二つながらの大先輩として、このことだけは彼に威張ることができるのです。こんどは私が師匠格として、いろいろお教えしたいと、大いに自負を高めるものでございます。

 しかしそうはいうものの、はたして私が結婚生活で、彼の師たり得るか、と申しますと、私ははなはだ疑問に思うのでございます。何となれば、私の結婚は月並というか、世間なみとでもいうものでございまして、親やまわりからすすめられるままに、ついウカウカと結婚してしまった、と言えないことはないのです。そこへいくと大日向君のばあいは、はっきりした信念をもって、チャンス到来を何年でも待つ、という生き方でしたから、やはり彼と私との間のハンディキャップは、縮まりそうもないのかもしれません。

 が、しかし、結婚生活は理解ではなく、実践でごぎいまして、その実践では私は私なりの生き方で、彼に教え得る何ものかがあると、確信いたしております。

 しかしその確信も、新婦みどりさんの前にはどうやらくずれそうです。ご教職にあられた方と承わっておりますので、これでは私の方が新しい師匠を迎えることになりそうでございます。こんなわけで、大日向君は私の永遠の師でありますとともに無二の親友でございます。私より十年遅い結婚もやがてその実質においては私を追い越してくれることでありましょう。後の雁が先に成るという、大日向君はそんな人でございます。本当におめでとうございます。心からお祝いを申しあげます。


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