25.確信と疑惑

 ものごとは確信をもってはじめると、疑惑に包まれて終るのがオチである。しかし初めに疑ってかかり、じっくりそれに耐えれば、最後は確信に満ちたものになるのである---と大変偉そうなことを申しましたが、これは私の思想ではなく、フランシス・ベーコンの言っている有名なコトバであります。ただいまお仲人さんその他から新郎、新婦のまことにご立派なお人柄がほめたたえられましたが、そのような確信をお持ちになることは、ベーコン流に言えば、疑惑に終るかもしれません。まあお互いに、大したことはないけれど、満足している、というぐあいで、初めからアラを覚悟でいますと、段々確信に満ちた夫婦像ができ上がるのでございます。

 

26.川柳と新婚夫婦

 この間必要がありまして、昭和のはじめころの川柳を調べていますと、なかなか面白いものがございましたので、ここに新婚に関するもの二、三をご紹介いたします。

 「女房の タスキは家の しめくくり」

というのがございます。今日の服装ではタスキは不要でございますが、これは質素と活動を意味するものですから、その精神は今日にも生かされます。団地未亡人というのがあるそうですね、ローンの支払いに追われてご主人は毎日残業残業でほとんど帰ってこない、というのは、「女房のタスキ」が家のしめくくりとなっていないせいでしょうか。

「新世帯 強飯ができ カユができ」

という川柳は、今日では炊飯ジャーのお陰でこんなことはございませんが、これもその精神は生きています。万事なれなくてうまくいかなくても不平はいわない。そうなればこそ「このはなはひくいほどよし福寿草」、福寿草は草丈が低くて黄金色の花を開くところに値打があるので、草丈が高くては福寿草らしくありません、もちろんこの川柳のハナは人の鼻にかけていることはいうまでもございません。そういう気持なら

「女房をこわがるやつは金ができ」

で家庭円満万々歳でございます。家庭経済がととのってこそ夫婦円満も本格的であります。

 

27.スウィフトの至言

 あの小人国や大人国のガリバー物語で有名なスウィフトが「私たちはお互い、たいへん仲がいい、というのは食べ物がみんな同じであるからだ」といっています。まことに他愛ないことですが、考えてみますと、大ていのことはこの原理で片がつきそうです。もし夫と妻が同じ物を食べなかったとしたら、家族の者が同じ食物を食べなかったら、決して円満はあり得ないでしょう。夫は妻の好みを妻は夫の好きな食い物を早く知り、同じ好きな食べ物の数が多くなるほど、天下泰平、家庭円満というところでしょう。

 

28.恋人と夫婦のちがい

 恋人と夫婦はどうちがうか?それはこうです。恋人同士の間は注意して自分たちの欠点をかくし合っている。これに反し夫婦というものは、あまりにもしばしば欠点を見せ合うものです。そこでゲーテは申しました。「愛する人の欠点を美徳と思わないほどの者は、愛しているとは言えない」というのですが、これは真理でございましよう。

 

29.ロシアのことわざ

 ロシアの古いことわざに「結婚して三日日に結婚を讃えるな、三年経ってから讃えよ」というのがあります。結婚して初めから良いと思ったらいかん、ということでしょうが、著名な芸能人の結婚記者会見などで、手離しでのろけたくせに、一年もたつと、お互いにののしあう記者会見を開くといったことはよくあることです。もしこういう結婚を三年後に讃える気持で出発したら、一年やそこいらで終幕にはならなかったはずであります。今日これから新婚旅行へおでかけの新郎、新婦のご両人も、どうか三年後に本当に良かったと讃えられるよう、その大きな実りを祈ってやみません。

 

30.男と女と夫婦

 ハベロック・エリスが「男と夫は同じものではない。同様に、女と妻もおなじものではない」ということを言っています。性心理学者として世界的に有名なエリスのことばだけに、これはなかなか含蓄に富むものでございます。男と夫、女と妻は同じではない、というのですが現実には同一人でありますので、夫の中に男性的魅力を、妻の中に女性的魅力をともに見出すことは困難だ、とエリスは言っているのです。だからこそ、家庭の外に異性的魅力を求めることになるのですが、そのことを逆説的にエリスは警告している、ともとれます。妻は妻であると同時に女性であることを忘れず、夫は家庭経済を支える働き手であると同時に、妻の求める男性美であることを忘れないように。


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