出席者のあいさつ

還暦同窓会にて

 久しぶりにたくさんの旧友にお会いし、懐かしさと、うれしさで、心がはずんで大いに若返りました。幹事の皆さん、今日はほんとうにご苦労さまです。心からお礼申し上げます。

 お互いに忙しさにとりまぎれ、なかなか一堂に会するチャンスがなかったのですが、本日皆さんにまみえ皆さんがお若いのには、いささかびっくりいたしました。還暦といいますと、なんだか古くさい響きがし、あまりいい気分のしないものですが、皆さんにお会いしたら、まだまだ、60や70は壮年時代で、これから一働きも二働きもしようとする並々ならぬファイトをお持ちなので、大いに意を強くした次第です。僕なんか、のんきな性分なので、よく女房に「いい年をして」とたしなめられるのですが、安心いたしました。僕は、第二の青春を楽しもうと思いますが、皆さんいかがですか。

 しかし、あのころは楽しかった。弁当を午前中に食べてしまって、昼飯の時間にベソをかいた人、女の先生の弁当と男の先生の弁当を取りかえて、知らん顔をしていた人、校長先生の下駄箱から靴を取り出して隠しておいた人、それから教室のドアの上にバケツを取りつけて、先生が来たらバケツが落ちるように仕掛けをした人、そしてかくいう僕だって、ずいぶん痛快ないたずらをして叱られたことを思い出します。しかし、こういう悪ガキどもが、時が経過して還暦を迎える羽目になったのですから、愉快でしかたがありません。

 今日は、仕事のことなど忘れて、あのころにもどって大いに語り合いましょう。


同窓生はみんなの宝物

     − 還暦同窓会にて −

        文化農業協会会長 須 藤 憲 三

大正四年の三月にこの加茂小学校を卒業した仲間の40人もが、今なお御健在な恩師3先生をかこんで、今日ここに、こうして顔を合わせております。まことに夢のような気がいたします。

 私は17の年に東京へ出て、ときどきしかこちらへ帰っていないので、一別以来49年ぶりの顔が大部分なのですが、たいてい一目で「あ、誰だ」とわかりました。うれしいことに、当時の女生徒だった方たちが、今日は10人も来てくださっています。これらの方たちは、私は一人もまちがわずに思い出しました。

 これがもし30年か40年前でしたら、ちょうど皆さん女ざかりで、オチャッピイ時代にはくらべようもない美しさに輝きほこっておられたでしょうから、あるいは見ちがえたかもしれませんが、やはり、孫が小学校へゆく年頃ともなりますと、幼な顔がもどってくるものらしいですね。

 そこへゆくと、男のほうが変りかたのひどいのがあります。○○君なぞは、名のりをあげられるまでどうしても見当がつかなかった。あの色が黒くてチンチクリンだった○○君と、この20貫を越しそうな福々しいおじさんとでは、あまりにかけはなれているからです。でも、名前をきくと、とたんに昔の顔---50年前の顔が、カッキリと浮き出てくるからおもしろいものですな。

 50年といえば、一世紀の半分です。今度の会の通知をうけたときに、ふと、半世紀にわたる人間のつながりの貴重さ、ということが頭に浮かびました。考えてみると、人口1千万の東京で、50年以上の知り合いというのは、たった一人、私の兄だけであります。おたがいの配偶者にしても、同じ部落内で結婚された方以外は、ほとんど50年未満のつながりにすぎません。

 そう思って眺めわたしますと、この席の42人のお顔が、私には宝石よりも貴い、だいじなものに思えるのであります。皆さんも必ず同感だろうと思いますので、ぜひこれからは「自分は同窓生みんなの宝物なんだ。もしも欠けたら、それだけみんなの宝が減るんだ」という気持で、一層からだをだいじに、長生きを心がけてまいりましょうや。御賛成でしたら、一つ約束の拍手をおねがいいたします。

 御列席の三先生は、一番お若い栗田先生が70才だそうですが、これからもますますお元気で長生きしていただかねばなりません。

 ところで、われわれの存在は先生方にとって特別の意義をもっております。山本先生は新婚ほやほやでわれわれを受持たれたのでしたし、木本先生はまだお嫁にいかれる前の、うら若く美しい間島先生のときからのおなじみ。栗田先生も21、2の独身青年教師だったわけで、当時のはなたれ小僧やオチャッピイ娘をごらんになることは、すなわち、御自身の青春と対面されることになる。これは何よりもききめのある若返り法と申せますので、せいぜいみんなで先生方のところへ顔を出し、ホルモン注射の役割をして、海山の御恩を返す一端としたらと思います。

 これも、御賛成なら拍手で約束をして下さい。

 幹事諸君の行き届いた御配慮で、不参の方、亡くなった方の名を、こうして貼出して下さいました。一つーつの名が、その面影をなつかしく浮かび出させてくれます。みんなここにいてくれるような気がします。いまは亡き49名と、欠席の32名のためにも、その冥福と健在を祈ってさかずきを挙げたいと思います。


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