□　私大学長を悼む

日本私立大学協会会長　稗　方　弘　毅
本日正に、昭和女子大学学長従三位勲三等故玉井幸助先生の大学葬の厳粛裡に挙行せられるに当り、日本私立大学協会を代表し、先生の御逝去を悼み衷心より哀悼の意を表し、謹んで弔辞を申し上げます。
先生は夙(つとに教職を志され、東京高等師範学校に学ばれ、卒業後同校教授に任ぜられ、傍ら本学の前身たる日本女子高等学院教授を兼務され、昭和二十一年本官退官後財団法人東邦学園理事、日本女子専門学校教授に就任され、二十四年昭和女子大学教授、文家政学部長に、翌二十五年には短期大学部長に、また昭和三十七年には昭和女子大学長に就任され今日に至ったのであります。
先生はわが国教員養成に一生を捧げられると同時に本学の経営に当られ、昭和二十四年昭和女子大学を設立、翌二十五年短期大学部を併置、ここに女子総合学園を形成され、昭和三十年不幸にも校舎の大半を焼失するや、幾多の困難を排して復興に日夜献身され、今日かかる殿堂を誇るまでに再建され、今や学生生徒児童園児は五千名に達し卒業生二万余名に及びわが国女子教育に貢献され多大な足跡を残されたのであります。
また先生は戦前は国語審議会幹事として長年にわたり活躍され、昭和十七年勲三等瑞宝章を叙勲され、同二十一年高等官二等に叙され従三位を賜わり、昭和四十一年には勲三等旭日中綬章を叙せられたのであります
が、かような教育、経営の両面にわたる御活躍のほか先生は学術の研究に努められ、国文学中日記文学の第一人者としてその御高名は全国津々浦々に達し、数多い学術論文・著書は貴重な存在としておおく江湖に親しまれその成果は高く評価されております。
時に先生は最近相次ぐ学園紛争にいたく心痛され、わが国の前途を憂慮され、日本私立大学協会大学管理運営体制研究委員会の幹事として学園正常化に尽力されつつあったのでありますが、その労半ばにして病魔に見舞われ、不幸御逝去されましたことは邦家の為誠に残念至極に存じます。
今日先生と幽明境を異にすれども、先生御生前の御遺徳はあまねく本学の役員、教職員を初め学生諸君に受け継がれ、本学の建学の精神の中にながらえ、本学隆盛の源となること信じて疑いありません。
またわれわれ大学教育関係者は先生の御遺志を体し国家百年のため教育の正常化を期する決心をいたしております。
されば在天の御霊の安からんことを切に御祈り申し上げ弔辞といたします。

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