人前結婚式の立会人のあいさつ

 畠中君、明子さん、おめでとう。

 ご来場の皆さん、おめでとうございます。それでは、皆さんは親しい方々ばかりですが、新郎新婦を簡単にご紹介させていただきます。

 新郎の畠中君は、秋田県立美術短大学校出身の新進商業デザイナーで、ご卒業と同時に○○デパートの宣伝部に入られ、昨年独立してプロダクションを持たれました。ダイナミックな造型に加えて、その温かくぬれた色感は、そのまま畠中君の大きく豊かな人柄をあらわしています。

 新婦の明子さんは、○○薬学をご卒業の薬学士さんで、○○製薬にご勤務されています。大変明朗なスポーツウーマンで、また音楽がお好きで、そのCDコレクションは玄人はだしと伺っています。

 お二人の結びつきは、○○山岳会であります。入会は三年ばかり前に相前後して入られましたが、山へ登る人は用意周到と申しますか、用心深いと申しますか、山岳会に入られてからも石の上にも三年の試験期間があったのではないかと存じます。しかし、また、山に登る人は一たん決心すると果断決行の特性があります。畠中君のプロポーズが立山の山頂で、この六月三日、本日が九月九日ですから、まわりの人は、ただあれよあれよというばかりでした。皆さんのなかには、招待状をいただいて眼をこすった方もいるのではないかと思います。

 私の友人のA君は出張の多い人で、半年以上を外国出張や国内出張に追い回わされている人ですが、木枯の吹き込むおでん屋でこんな話をしてくれました。「ぼくは年中家をあけるので、妻のささやかな願いもほとんど聞いてやれない。ほんとうにすまないと思っている、感謝もしている。こんなことで、そのお返しにはならないが、ぼくはどんなに疲れているときでも妻の寝息が聞こえるまでは、決して眠らないようにしている」

 A君の話は、私に木枯の冷たさと、底冷えの胸の底からほのぼのと湧き出る人間の温かさを感じさせられました。

 そんなことのあったある日、奥さんがわたし達の家にたずねて来られ、例のとおりA君の出張中で、夜おそくまで話されたことがありました。そのときの話に、「出張中はいつもダブルベッドの真中に寝るのですが、目が覚めるといつも、夫の場所をあけて、自分のところに寄って寝ているんですよ」と何気なく話されました。このときも、わたしの胸にじーんとくるものを感じました。

 畠中君、明子さん、同じ風でも、春の風は上着をぬいで明るい太陽に手足をのばしたくなります。しかし、木枯やみぞれは肩をすぼめてもそのつめたさは骨にまでしみてきます。そんなときこそ肩を寄せ合い、心を結び合ってください。

 どうか皆様におかれましても、このお二人に、限りないご支援をたまわりますようお願いいたします。

 ささやかな祝宴で申訳もございませんが、山海珍味にもまさる、温かい皆様に迎えられましたことを、両人になり代わり、感謝申し上げますとともに、時間の許す限り、ごゆるりとご歓談いただきたいと存じます。


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