上司が頼まれ仲人となったあいさつ

 本日はおめでとうございます。長谷山哲也君と高橋美香さんとの間に婚約相ととのい、本日の良き日を選びまして、ただ今当会館のご神前におきまして、とどこおりなく結婚式を終えられました。このことを謹んでご報告申しあげます。

 長谷山哲也君は二十八歳、巡査拝命後、満五年になり、当警察署へ転属されてから二年目であります。このたび郷里から新婦美香さんを迎えられるにあたり、不肖私が署長という上司の関係から、媒酌人という大役を承わった次第でございます。

 長谷山巡査につきましては、その人格から同僚および上司との間に評判もよく、その成績は過日の広域捜査の△△事件の際にも、いかんなく発揮されたことで、今なお記憶に新たなものがございます。こういう仕事熱心な長谷山君は、また非常な勉強家でもあります。その努力が報いられて、先日の部長昇進試験に合格され近く任官される予定でございます。

 それを前にしての、この度のおめでたは、まさに錦上花を添えるということばどおり、ひとしお、おめでたく、よろこび申し上げます。

 新婦美香さんのご実家は、長谷山君の実家の隣村で、果樹栽培を営まれておられます。女子高校卒業後、家庭にあって、主として父上の経理面を手伝われてたとのことで、しとやかななかにもまことにしっかりした方でございます。

 そこで、このしっかり者を長谷山君の好配偶に選び両家の間を種々にお骨折りいただいたのは、ほかならぬ長谷山君の郷里の旧友嶽石嘉実さんであります。このことをご披露申しあげ、本日ごつごうでおいでいただけなかった嶽石さんの労を謝するものでございます。

 さて、警察官の生活というものは、同じ公務員の中でも、きわめてきびしいものがございます。ときによっては、勤務時間の規定は無視されねばならないことも多く、ほんとうに公僕精神に徹しなければ勤まるものではありません。ことにその内助となる妻の苦労にもひとかたならぬものがございます。

 こんなことを申しあげると、新婦美香さんは恐れをなさるかも知れませんが、だいじょうぶです。長谷山君はめったなことでは、ヘマをやる人ではありません。

 それにわれわれ警察官は、そういう公務としての苦労を乗り越え、任務を無事に果し得たときの喜びは、常人では味わえない、大きな生きがいを感ずるものでございます。新婦におかれては、この点をご理解いただいて、長谷山君のよき内助者となられますよう。また、今日ご来会の皆様方には、どうか、この前途有為の若夫婦のために、末長きご支援、ご声援をお願いする次第でございます。

 これをもちまして、不肖仲人としてのあいさつといたします。最後に両家にかわりまして、本日のお礼を申しあげ、粗餐ながら、どうか時間まで、ごゆるりとお過ごしくださいますようお願いいたします。


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