衆議
院議員立候補者、〇〇〇〇さんを推薦
御指名をいただきましたので、誠に僭越ではございますが、一言ご挨拶させていただきます。
早いものでございます。良友と申してよろしいのか、いや、最たる悪友の一人と言ったほうがよろしいと思いますが、〇〇さんとは、お近づきにさせていただき
まして三十年になります。
紅顔の美少年でありました私たちも、もうすでに白いものが混じる年になってしまいました。顔形は、この二十年の間にずいぶんいろいろなことがございました
ので、変ぼうを遂げてしまったのは御覧のとおりでございますが、私と〇〇さんがお会い致しますと、出る話といいますのは、全く一貫して変わりません。必ず
憂国談義になるのであります。二十年前も、現在も、語り合うということでは、お互いにこの一点に集中致します。
日本の政界というのは、なぜこうも代わり映えしないのでしょうか。いや、代わり映えなどという生易しいものではありません。本質的に欠けている大切なもの
があると思うのであります。政治の極めて重要な部分を占めます外交について考えてみますと、一貫して一貫性がない、ということではないでしょうか。
言葉遊びのようで申し訳ございませんが、戦後の日本の外交史を見て参りますと、実に一貫性がないという点で一貫してきたとお思いになりませんか。
特に近年、その感を強く致します。
アラブが強く出てきますと、特使を派遣してすぐ陳謝する。
反アラブがそれに対して抗議しますと、いや、あの真意はこうだ、と弁解する。
外国はこの日本をどう見ているのでしょうか。
今、中国と国交を結ぶことに躍起になっています。が、本当にソ連が怒り出したらどうするのでしょう。択捉島で軍事演習が行われている、と防衛庁の高官がテ
レビで言ったかと思うと、いや、あれは基地を作ったにすぎない、と外務大臣がこれを否定するんです。演習ならそれで終わりですが、基地を作ったのならもっ
と重要なことではありませんか。
毛沢東さんが全盛のころには、もう毛沢東様々であったのが、残りの四人組が追放になったら、今度は鄧小平様でしょう。もちろん、外国のことですから、すべ
て手に取るように分かって判断を下す、などということは不可能でありましょう。しかし、最低限度の努力をしてほしいのです。今、日本が最も必要としている
のは、うさぎのように長い耳を持ってその集めた情報を的確に分析するということではないでしょうか。
ここに、国際感覚があるかないかが重要なポイントとなってくるのであります。
色彩感覚のない人に、どんなにすばらしい目の覚めるような色を示しても意味がないように、国際感覚の全く欠落した政治家が、国際情勢をいくら集めて分析し
ても、これまた全く意味がないのです。どうしていいか分からないのです。どうしてよいか分からないから、適当に目先のことだけなんとか取り繕う、といった
ような連続であったわけです。
ですから、私がぜひとも〇〇さんに政界に出てほしいと思いますのは、この国際感覚が極めてシャープだという点であります。
それと関連致しますがもう一つ。生っ粋の日本人であり、日本人としての誇りを純粋に持ちつづける〇〇さんが、実は、最も日本人らしくない、という点であり
ます。
と申しますのは、先程貶しました日本の外交姿勢と表裏一体をなすのですが、世界の中で「日本人ほど長期的なビジョンに欠ける国民はないが、また同時に、日
本人ほど目先のことに辻褄を合わせる力を持つ国民はいない。それは、正に天才的と言ってもよいほどだ」と評される点であります。
日本人には、長期的展望とか長期的計画というのはどうも苦手なようです。
戦略などという言葉は知っていても、本当の意味でこの戦略という言葉を理解している人は、実に少ないのではないでしょうか。物事に対して腰を据えて取り組
む、我々が考える三年先、五年先を考える、などということは、持って生まれた資質なのでしょうが、それを〇〇さんは、天賦のものとしてお持ちなのです。そ
れがあるからこそ、シャープに国際感覚が磨かれてきたに違いありません。
就職の際お世話いただいたからxx先生に、この町の橋を掛けてくれたのはxx先生だから、といった古典的な選挙では、これからの日本は救われません。
〇〇さん、世界のなかで、安定した日本の地位を確保することに専心してください。この町の橋などどうでもよいことで、世界に橋を掛けてくださいますようお
願い致します。
私たちも必死でがんばります。本物が本物の舞台で活躍できますように私からも皆さんに心からお願い申し上げて、私のごあいさつと致します。