中学校長着任のあいさつ

 

 ただいま教頭先生からご紹介をいただきました、○○です。私は九月一日付けで、本校の学校長を命ぜられ、赴任して参りました。本日から私が皆さんの学校長として、すべての責任をもって、お世話させていただくことになりました。

 こうして皆さんの顔を見ていますと、はち切れそうな元気あふれるエネルギーを感じて心強く、また嬉しく思います。中学生時代は、人の一生のうちで、一番心身活動の旺盛なときで、皆さんはそれを象徴しているように思えるからです。その活動力を学習にスポーツにかたむけて、人間一生の働きとなる頭脳とからだの基礎を作り上げるのが、中学教育の目的であります。それにそうように、私は今日から、前任の校長先生の残された、立派なお仕事を受け継いで、今後の学校経営にあたる所存でおります。

 中学校での教育は、人間としての基礎をつくることに重点があるのですから、単に勉強がよくできる「物知りの人」を作り育てるのではありません。仮に学科の成績はあまりふるわなくても、人間的にしっかりした教育がされていれば、中学を出てそのまま職場で働いても、高校へ進学しても、立派に学問や仕事と取り組んでゆけるのです。

 では、人間的にしっかりしているとはどんなことかと申しますと、これは学校の先生や家庭の父母からしつけられて、でき上がるものではなく、どこまでも自分で自分の精神を鍛練するより方法はないのです。というと大変難しく聞こえますが、ほんのわずかな心がけで誰にでもすぐできる、簡単なことです。

 それは、何かといいますと、怒りたいことや、がっかりしそうなとき「ここだナ」とちょっと注意を心によびおこすことです。たとえば、毎日の登校でも、晴れた日ばかりではありません、雨の日、風の日それに気分の悪い日など、登校するのがいやになることがあります。そんなとき、「ここだナ」と自分で注意することです。また友達との間で意見が対立して、腹の立つときも「ここだナ」と思って自分で注意すれば、怒らないのでけんかにならずにすみます。もう少しおづかいがほしいと思って父母にねだり、ことわられたときも、「ここだナ」と思ってがまんする。

 こういうふうに、いわば自分のわがままをおさえる訓練をすることを工夫するのです。

 皆さん、できるでしょう。

 「ここだナ」と、ちょっと注意するだけでよいのですから、きっとできるはずです。

 このように自分のわがままをおさえる訓練が積み上げられて、何事にも動じない、しつかりした人間ができ上がるのです。そういう人間性があってはじめて、学問も仕事も、本当のものができ上がるのです。皆さんはどうかそういう中学生になっていただきたい、と私は念願するものであります。ではこれで、私の就任のあいさつを終わることにいたします。


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