◆銀行支店長就任のあいさつ
この度、はからずも歴史ある○○支店長の大役を仰せつかり、千葉支店から参りました○○です。
はじめのことでもあり、まったく白紙の状態で、なにも存じませんが、当支店は店勢もきわめて順調に進展してをる由で、それもひとえに前任△△支店長をはじめ皆さまのご努力のたまものと、深く敬服するとともによろこびにたえません。私も△△さんの方針を受けつぎ、頭取のご指示にもとづき、皆さまの変わらざるいっそうのご支援を得て、いよいよ業績を向上させ、この支店の発展の一翼をにないたいと存じます。
私は野球が好きで、プロ野球のほか、六大学野球をときどき観戦に参りますが、母校の××大学びいきでして、Aクラスの時はよく応援に参りました。現金なものでここ数年間はBクラス、それも東大と最下位を争うというのでは応援する張り合いがなくなり、最近では六大学野球全体の人気が落ち、つまらなくなったのも、もっともな気がいたします。
強者は常に強者でなければなりません。ところが今春からOBの声がうるさくなり、監督が変わりました。すると、どうでしょう、見違えるばかりのハッスルぶりで、○○と優勝を争うという信じられないことになり、見事ストレートでこれを撃破して、天皇賜杯を獲得する栄誉を担うにいたりましたしかも、メンバーは昨年とほとんど同じなのです。つまりこれは駒を指揮する将官の器による、ということなのだと思います。
ちょうど私の任務は、この監督のようなものではないかと存じます。甲子園をふんだ優秀な選手でも、指導によっては持てる力を十二分に発揮できず萎縮してしまいます。当行に選ばれて入社された優秀な皆さまが、全力投球をされ、…銀行員の意識に徹し、根性をもって、各自の職分を全うしていただければ、従来以上の速度をもって、成績が上がるのは火を見るよりも明らかです。
私はもちろん常に先頭におりますが、といって私一人、監督個人がいかにバタバタいたしましても、その力は知れております。皆様の総力を結集して事にあたれば、それこそ何百倍何千倍にもなるわけです。
ここで私は、当店を経営するにあたって、今後一か年間に、預金計数を一00億円にすべく策定いたしました。この目標は当店の体質、環境のいずれから見ても飛躍的な数字で、もとよりその達成には、多大の困難が予想されますが、計画どおりの努力さえすれば、到達可能なものであり、あくまでも大いなる努力目標としてがんばりたいと存じます。
この目標達成のための業務発展方策は、詳細にわたり後日、各職位者を通じて皆様にお知らせして、ご協力をお願いいたしますが、何といっても先刻申した皆さまの「やる気」がなくては、目標達成が不可能であります。一年後の祝杯を上げる日を、今から楽しみにしておきます。
最後に、私の座右の銘として「初心忘るべからず」という世阿弥のことばがあります。解釈は種々ありましょうが、私なりに常にフレッシュな気持で向上を求めようと理解しております。皆さまもどうか私の意のあるところをくんでくださり、全員一致協力、当店業績向上のため、一段と努力を傾注されることを切望して、あいさつにかえる次第であります。
ありがとうございました。