原因不明の交通事故/呪いのトンネル

 

 

これまで私は実際にあったこととして、3つばかりの不思議な出来事を書いてきた。

 

 しかし、以前触れたように、私自身はいまだに幽霊なる物体(?)を見たことがない。かつて金縛りや幽体離脱のような体験は何度もしたことがあるが、これは今や完全に科学・医学的に解明されているので、不思議な出来事の範疇には入らないだろう。

 では、そのように解明されていない不思議な現象、たとえばそこにいる全員が幽霊みたいなものを見たとか、声を聞いたとか、何でもない道なのに、なぜかそこでは事故が多発するなどといった現象は、どのように説明が付くのだろうか。


 かつて早稲田大学の大槻教授が、居合わせたもの全員が幽霊を見たという報告は、一種の集団催眠であると説明していた。肝試しのように、参加しているものがすべて同じような心理状態にあるとき、いとも簡単に、存在しないものが見えたりすることがあるそうだ。うん、確かにこれも一理あると思った。皆さんもご経験おありかと思われるが、小さい子供達だけで肝試しをすると、往々にしてそんな事が起きるものである。

 しかし、私が「峠の幽霊」で書いたように、肝試しなどでなく、仕事という目的で集まっていた大の男達が、何の予備知識・前触れもなくゾロゾロと現れる幽霊を見たという証言は、どのように説明が付くのだろうか。見たという人達全員で幽霊話を作り上げて、話す人話す人を次々とだましていったとはとても思えないし、またそんなことをする必要性があるとも思えない。何しろ普段誰も通らないような道である。幽霊話を作ったとしても、得する人は誰もいないのだ。工事関係の利権をめぐってでっちあげた話でもない。そうなると、この話はやはり不思議に思えるのである。現場の歴史的背景をもっと調べる必要がありそうである。うやむやな情報として、かつてその山が罪人の斬首場だったということだけはつかんでいるが。

 

 そのほか、死亡交通事故現場での幽霊目撃談も多い。どなたのまわりにも一カ所はそのような場所があるのではないだろうか。"小雨そぼ降る夕方の、○○トンネルの入り口で、血を流した女性が・・・"などという噂はひっきりなしに耳にする。そして私もそのように噂される場所へ、事の真相を確かめようとして何度も行ってみたものだ。その結果、私が見たものは、幽霊などではなく、明らかに設計ミスの道路や、冬期だと局所的に凍結しやすい路面、車のライトのあたり具合によっては人に見えなくもない木立、そのようなものがほとんどで、たいていの場合は安全運転していれば何ともない箇所や、見間違えなどという場所がほとんどなのだ。

 

 しかしである。

 以前"特命リサーチ"(NTV)という番組で、連続して起こる死亡事故現場の解明を行っていたが、その一因に、電磁波障害なるものがあって興味深かったが、そのようなことを含めてもまだ事故原因の解明ができない死亡事故現場、これもまた全国には多数あるようだ。幸いにして(?)私の住む町の近くにもそのような場所がある。今から数年前までは県内で知らない人はいないくらい有名だった「トンネル」があるのである。

今回は、かつてそのトンネルを舞台にして、短期間で連続して起きた死亡事故の謎について触れてみたい。


 このトンネルの歴史は比較的新しく、開通したのは約20年くらい前である。国道105号線沿いにあるこのトンネルは、バイパス道路の一環として、一つの山をくりぬいて完成に至った。長さにして約200m弱だろうか。大型車も無理なく通れる道幅の広いトンネルで、もちろん中もランプで明るく照らされている。トンネルの位置は多少小高くなっているが、それでも見晴らしは良く、かなり遠くからその入り口は確認でき、走っていていきなり目の前に現れるようなものではない。ここで死亡事故が多発したのは、そのトンネルが開通してまもなくのことだった。


 地元の噂では、このトンネルの工事中にその後の一連の事故を予告するような出来事があったという。それはトンネルの掘削中、大型機械(赤色の)で作業中の人が、草むらからでてきたシロヘビを、故意か過失かは不明だが、殺してしまったということだ。(全国的にはどうかはわからないが、秋田ではシロヘビはその場所の守り神で、決して殺めたりするものではないという言い伝えがある。)その後、これは後日付け加えられた話かもしれないが、その死んだシロヘビが、このトンネルを通る赤い車の運転手を8人(この話を語る人によってこの数が変わるので、正確ではない)殺す、と呪いをかけたとか。さすがにここまで話が飛ぶと、にわかには信じられなくなるが、地元ではそのように語り継がれているようだ。そして、そのトンネルで次々と死亡事故が起きていったのは、開通してからまもなくのことである。

 

 シロヘビの呪いかどうかは不明としても、トンネルの開通後、立て続けに赤い車がトンネルの入り口の壁に激突して、そのたびに死亡者がでていった。ローカルニュースでそのことが報道されるたび、「またか!」といった何とも言えない恐怖と不安感が、そこを通る人達の間を中心に蔓延していった。

死亡者が次から次へと続出した当時、こんなことがあった。

 私の父もそのトンネルのある町の出身者で、実家もそのトンネルを越えてしばらく行ったところにある。その実家に立ち寄った帰り、私の叔母が体験した話である。当時その叔母も偶然赤い軽自動車に乗っていた。かねてから事故が多発していたのは叔母も知っており、トンネルの前ではかなり減速し、用心深く入り口にさしかかった瞬間、多くの人がぶつかった壁の方向へ、突然ハンドルが切れたというのである。切れたというのは正しくないかもしれない。このようなときによく使われる表現を使えば、「引っ張られた」とするべきかもしれない。それほど急激に車が方向を変えたらしい。叔母は幸い低速走行中で、事なきを得たが、もし何かの事情で急いでいて、しかもそのトンネルの噂を忘れていたら、彼女も何人目かの犠牲者になっていたかもしれない出来事だった。(なおこの一件は、後部座席に息子たち2人が同乗しており、私が個別に事の顛末を聞きだしたところ、叔母の話と相違ないことを確認している。)

 

身内の話はさておき、このあともやはり赤い車の事故は続き、ちょうど8人目だったかの死亡者が出たときの事故の有様は、それは悲惨なものだったと記憶している。その車を運転していたのは隣町の青年で、(全国花火大会で有名な)大曲市方面から、本荘市方面へ向かっていた。(このトンネルでは、この方向からの事故が多い)その車は、やはり多くの車がぶつかった壁に激突し、大破炎上してしまった。そのせいでしばらく運転していた人間の確認ができず、ようやく確認がとれたのは、事故後だいぶ経ったからだったと思う。(大破した自動車のフレームから、車体番号をようやく読みとり、その氏名が公表されたのである。)


 この悲惨な事故のあと、不思議なことにぱったりと事故がなくなった。現在まで10年は経っているが、全くと言っていいほど事故がなくなったのである(小さい事故はまだあるようだが)。もともとこのトンネルは、先に述べたようにロケーションは悪くないので、事故が起きること自体が不思議で、事故が起こるたびに地元では不思議がり、得体の知れないものへの不安感がつのっていったものだったが、それが噂どおり8人(6人という人もいる)が亡くなった段階で死亡事故がなくなったので、それからの噂は「シロヘビの呪いが解けたようだ」というものに変わっていったことは言うまでもない。

今現在では、昔の悲惨な事故の数々がまるで嘘のように、落ち着いたトンネルになっている。しかし私は、このトンネルに、去年の夏11年ぶりに、非常に霊感力の高い人と一緒に訪れる機会に恵まれた。その人は死亡事故現場の場所など、何も言わなくても、いとも簡単に察知してしまうほどの力を持っている人である。 そんな人がこのいわく付きのトンネルでどのような反応をするのか、私は非常に興味があった。そしてそのトンネルの入り口二カ所と中を見てもらった結果、「かなり静かだ」という。どうやらおどろおどろしいものは感じないようだ。しかし、ただ一言、そのトンネルの上の山側を指さし、「あそこで誰かがこっちを見ている」とだけボソッと語った。男の人のように、何か大きなものがこっちを見ている、というのだった。同行した私たちは霊感ゼロなので、全くそのような感じは受け取れなかったが、ただ以前事故が多発したときに、私がビデオを持っていってそのトンネルの周囲を撮影したとき、原因不明の赤い光が映り込んだことがあり、偶然にもその視線を感じる方向はその赤い光の映った方向と一致していたのだった。下にその問題の赤い光を公開します。

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(撮影・1987/9月)
8mmビデオの画面をデジカメで写したものなので、はっきりとは見えないかもしれないが、動画では一瞬(0.1秒くらい)ぱっと光るだけで、その後は何も変なものは映っていない。撮影したとき、ファインダーでは全くわからず、帰宅したあとテレビ画面を見ていて初めて気づいたものだ。これがテープのノイズではないという保障はないが、今までビデオを10年以上撮ってきて、このような光が映ったということは一度もない。どなたか原因(機械的に)を推測できる方がおられたら、どうか私までご報告いただきたい。また、霊感の強い方で、もしこの赤い光から異様な霊気を感じられる方がおられても、是非教えていただきたい。どちらかといえば、後者のご報告は私としても少し気持ち悪いが、もはや撮影してから10年以上経っており、事故も終息したことから、冷静にその報告を受け止められそうである。ちなみに、私はこの変な赤い光の撮影直前に、「暗くて何も映らないなぁ。」と言っていた。その直後にこれが映っていたわけで、私のこの言葉に何かが反応して映り込んだのか、妙な不気味さを感じている。

 

最後に余談だが、実話第2弾で紹介したタクシードライバーの佐々木さんは、このトンネルの中で、はっきりとした幽霊らしきものを見ている。この話はもう少し確証を取ってからこの場で報告するつもりである。ちなみにこの幽霊とおぼしきものは、先の事故で亡くなった方々ではなく、別の場所で亡くなっている人達の幽霊だった・・・・。

 

次回をお楽しみに・・・・・
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