番外編 秋田特産のキノコ? これを読んでいらっしゃる方々の中には、秋田県以外の方もたくさんいらっしゃることと思い、今回はちょっと珍しいキノコについて書いてみたい。まずはこの写真をご覧頂きたい。
(写真・畠山陽一/秋田のきのこ/無明舎出版)県外の人で、このキノコを見て、「あっこれは○○ダケだっ!」とすぐに思い当たる人は、よほどのキノコ通であろう。
まして、「これは普通にとって食べているぞ」と言われる方がいらっしゃったら、是が非でも私までぜひご報告を(^.^)
さて、このパッと見た目、気味の悪いキノコの名称は、「シラフタケ」と言う。とは言え、この名前は上記本の著者である畠山陽一氏が命名したものだ。昭和48年の9月に名付けたらしい。
ここに、その本の内容を(非公認ながら)書いてみたい。
<超ジャンボで真っ白なキノコ。一見シロタマゴテングダケを大きくしたような感じのキノコで、初めてお目にかかったのは昭和47年9月、河辺郡雄和町の山中だった。しかもビックリしたのはこのキノコを部落の人がこぞって「シロフマツタケ」と称して高級キノコとして食べていることだった。見たところ粉まみれで、しかも大型なためとても食えそうなスタイルではないのだ。地元の人のキノコへの関心の高さと勇気に脱帽したものだった。昭和48年9月本種を採取し、詳細に調べたところ未記録種だったので、雄和の方言をそのままいただいてシラフタケと私が命名したものである。>とある。
テングタケ科に属し、まさに一見したところでは、シロタマゴテングダケと見まごうかと言ったキノコである。
先日、私は知人の誘いで、このキノコらしいものを採りに行こうということになって、秋田から片道150kmも離れた岩手山中まで出向いた。何でもその知人は今から数年前、そこの山でこのキノコに出会い、あまりにも大きく、マツタケのようなスネをしているものだから、マツタケのホワイトバージョンだと信じ切って、また今年もぜひ採りに行きたいというのであった。私もその熱意に押され半分、自分自身もそのシロマツタケに興味があったのが半分で、気づいたときにはハンドルを握っていた。
現場の山は松が点在する雑木林で、着いて早々、道端にてこのキノコらしきものを数本発見する。同行した知人は、「これだ、これだ」と叫びながら、まるでとりつかれたかのように黙々とそこら辺で採りまくりはじめる。私もつき合って採りだしたが、よく見てみるとこのキノコ、以前にも採ったことがあるものだった。(その時は食べる勇気がなくて、捨ててしまったが)
おそらく、猛毒種の3兄弟(シロタマゴテングダケ・ドクツルタケ・タマゴテングダケ)を良く知っている方は、この白くてジャンボなキノコ、見た瞬間に、足蹴にすることと思う。それだけ気持ち悪い。初めて本菌を食べた人には頭が下がる思いだ。トラフグを初めて食べた人くらいに勇気がいったことだろう。
さてこのキノコ、いざ採ったのはいいが、傘の裏の香りをかいでみると、どうも私個人的に好きになれないものがある。何というか、独特の香りがするのである。(マツタケ臭など間違ってもしない) 肉の腐敗臭に近い、ツワリのひどい人に嗅がせると、即効で吐くのではないだろうかと思えるくらい、クサいのだ。(キノコ自体が古くなってそのような香りがするのではなく、まだ土から出たばかりの幼菌でも同臭を確認) それでも同行した知人は、そのような不快臭を「芳香」だ、とのたまっていたが、私には決してそう思えなかった。(~_~;)
そんなせいで、私は自分で採ったのもすべて相手に分け与えてしまったが、料理して食べる段になると、このキノコは実にいいダシを出すらしい。臭いも気にならず、吸い物にしてもおいしいということであった。確かに先述の「秋田のきのこ」によると、<ほとんどの地域で塩蔵しておいて正月に塩出しして吸い物などのダシ用として珍重、高級品にランクし大事に保存している。魚との煮物、野菜炒め、すき焼き、里芋との甘辛煮など、万能型のキノコ。>とある。キノコとは本当に不思議なものである。
ではこのキノコ、どのような場所に発生するのか、参考のために書いておく。まず第一発生条件として、近くに必ず赤松があることがあげられる。ちょうどマツタケが発生するのに適した条件の一つをクリアしている格好だ。また水はけがよい雑木林、あまり雑草がない所など、やはりマツタケと条件だけは似ているようだ。従って昔の人はこのキノコをシロマツタケとか、サワマツタケなどと呼んだのかもしれない。(私の住む市の隣町では、このキノコのことをサワマツタケと呼んでやはり珍重していることが最近わかった。)
もしこれを読んでいらっしゃる方で、「ウチらもこのキノコを採って食べてるぞ、呼び方は○○だ」などという方がいらっしゃれば、先にも書いたが、ぜひ私までご一報願いたい。また、「こんなキノコは秋田にはないだろう?へへへ」という挑発も大歓迎である。各地方特産のキノコというものは、必ずあるはずである。ぜひそんなキノコ達に巡り会ってみたいものである。
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