ご存じのように、今年の4月から6歳以下の子供へのチャイルドシートの使用が義務づけられた。
これから法制施工後初のゴールデンウィークを迎えるにあたり、世のお父さん・お母さん達はその購入、取り付け、子供への着用と、例年に比べてさぞかし大変なことと思う。かく言う私にも、最も聞き分けのない年頃の娘と、生まれたてホヤホヤの息子がいる。当然車の中には「チャイルドシート」と「ベビーシート」を装着しなくてはいけない。
私の場合は、チャイルドシートは娘が生まれてすぐに親戚から「おさがり」をもらい受けたりしたので、そんなに初期費用はかからなかったが、三人も四人も子供(六歳以下)がいる家庭では、その購入費用たるや、半端ではないはずだ。また車への装着も、一つ付けるだけでも難しいのに、三つともなればその苦労は容易に想像される。むろん、装着によって家族全員が車に乗られなくなる場合は、取り付けが免除される規定があるが、たとえば夫婦と三人の子供の場合、後部座席には当然ズラリと三個もチャイルドシートが並ぶこととなる。そうなれば、手の掛かる子供をあやす母親は、助手席に乗らなければならないので、泣いてもわめいても放っておくしかなくなる。(注・一般的セダン車などの場合)
問題点はまだある。いや、いろいろ有りすぎて一つ一つはここで取りあげられない。が、私が最も納得いかないのは、他人の車を借りなければならない場合である。例えば親戚。そこに自家用車以外のもので出向き、いざその親戚の車に乗らなければならない場合。当然チャイルドシートはない。このような場合でも、原則的には着用の義務が発生するから困ったものなのだ。おそらくこのような状況を例外に規定してしまうと、それをタテに違反を免れようとする人もいるだろうから、(例外として)認められなかったのだと思う。しかし、このような状況以外にも、わけあって他人の車に子供を乗せなければならないことはあるはずだ。そんなとき、「運悪く」検問等でひっかかった場合、警察は大目に見てくれるのだろうか。実際にそのようにキップを切られた人の話は聞いたことはないが、もしそのようなとき、警察が事情も考慮せず、冷たき法の番人に徹した場合、それこそ警察なんてものは信用できなくなるだろう。(ただでさえ信用がないのだから)
ここで自分の立場を明言しておかねばならないと思うが、私は基本的にはチャイルドシートの着用義務化については賛成なのである。ただ、諸手をあげて大賛成!というわけにはいかないので、その理由を問題点とともに述べているのだ。
自治体の対応の仕方にも苦言を呈さなければならない。
全国の自治体の中には、購入費用の一部負担等、わずかではあるが協力的なところもある。秋田県内でも、横手市などは助成金を出してくれるし、無料貸し出し(とても全家庭をまかなえるとは思えないが)をしている自治体も全国には数あるようだ。
私はここで思うのだが、自治体たるもの、将来の税収をまかなってくれる子供達に、もっとお金をかけてやってくれても良いのではないだろうか。過疎化の進む農村では、この少子化の時代、新生児はとても貴重だと思う。六歳以下の子供が三人以上いる家庭には、その人数分くらいの購入費用を負担してしかるべきだと思う。確かに今生まれた子供が、将来的にずっとその町に住み続けるかはわからないが、長い目で見た場合、チャイルドシート一個くらいプレゼントしてあげても、自治体として損はしないように思えるのだが・・・。
(ちなみに私の住む本荘市には、そのような助成制度は皆無で、それどころか、わけのわからぬ公園整備などに大金を投じたり、水の町のイメージづくりに躍起となっている。それはそれでいいのだが、少しはこの問題を議会で論議していただきたいものだ。)
うちの娘は、誕生後すぐにチャイルドシートに乗せ、習慣にしていたので、二歳になるくらいまではおとなしく乗っていた。しかし、最近ある出来事を境にして、全く乗らなくなってしまった。むりやりシートに付けようとすると、火がついたように暴れ出し、大泣きし、車中は地獄図と化す。これは決して大げさに言っている表現ではなく、毎日の日課なのである。まるで誘拐してきた子供をムリヤリ車に押し込み、連れ去る光景のようなのだ。以前はおとなしく、ちゃんと乗っていた娘がなぜチャイルドシートが嫌いになったか・・・
それは、「歯医者」さんが原因である。子供が「注射」と並んで最も嫌いなものの一つ、歯医者・・
娘は不幸にして虫歯を患ったので、妻が市内の大きな歯医者さんに連れて行くことになった。
小さなお子さんを持つ方ならおわかりと思うが、聞き分けのない子供を治療するためには、歯医者さん側も大変。子供は黙っておとなしく口なんかあいていようはずがない。当然手足はバタバタ、顔はブルンブルン、そのまま治療しようものなら、口中血だらけになることは間違いない。ではそのような子供をどうするか。
そう、イスに縛り付けるのである。手足はロープで固定し、顔はヘッドギアみたいなもので固定される。そして大泣きする子供の口の中には、あの冷たく光る機械が「チュイーン」と入り・・・・。(「羊たちの沈黙」のレクター教授の姿を彷彿とさせる)このように、大人まで背筋が寒くなるような状況で、しかも痛みまで伴うものだから、歯医者に行った後は、見事に「イス」→「痛み」→「恐怖」といった心理的構図が形作られ、車の中のチャイルドシートを見ただけで、条件反射的に拒絶してしまうようになるわけだ。
言葉を理解するようになり、自分から「安全」についてちょっとでも関心を持つようにならないと、我が娘はとてもチャイルドシートに乗りそうもない。
私たち夫婦のように、子供がチャイルドシート嫌いで、出かけるたびに苦労している保護者はきっと多いはずだ。みんながみんな、おとなしく乗っているはずがない。しかし、だからといって、いやがって乗らない子供本人から警察も違反キップを切ることはできないので、当然その車の運転手から切ることになる。そこでだ。
いきなり違反キップを切るのではなく、「イエローカード」みたいなものがあれば良いと思うのだが・・・
親として、かわいい子供の安全を守るのは当然で、私に言わせればそのような安全義務を果たせない親など、「子供を育てる資格無し」と思うのだが、子供がどうしても乗ってくれない場合(うちの娘はいくらきつく固定しても、引田天功のように脱出してしまうほどだ)は、どうにもならないのである。泣き疲れて眠ってからいそいそとシートに移すしかないのである。また、後部座席で大泣きして、暴れまくっている様子をしょっちゅううかがわねばならないので、運転に対する注意力も著しく低下してしまう。かえってこの方が危険ではないか。
「一年以内に再び違反しない限り今回の道交法違反の効力は発生しない・・・」ような執行猶予的イエローカードがあれば、その間子供も成長し、聞き分けられるようになり、ちゃんとシートに乗るようになるかも知れない。場当たり的に「はい、違反してますね。事情なんかどうでも良いのよ。サクッとキップ切っちゃおうかな。」なんて取り締まられたら、たまったものではないのである。
繰り返すが、私はチャイルドシート着用義務化については賛成なのである。だが、もう少しその法律の内容について柔軟化する余地があるのではないかと思い、これを書いた次第である。
まさに「声なき声」であるが、同じような悩みを抱えている親御さんの意見を聞かせていただければ幸いと思うし、「このようなご意見をいただいた」ということで、この場でもって紹介したいと思っている。(特に警察関係の方からのご意見をお待ちしております)(^_^;)
00/4/29 記